現実(リアル)-大切な思い出-
何度も火月を悪者にして、自分を正当化しようとした。

しかしそのたびに、俺は自分の醜さに呆れ果てた。

そして結局、後悔だけが残った…。


火月ではなかったら、俺はこれほどまでの罪悪感を抱かずに済んだのだろう。

そう思うと、やはり火月を恨みたくなった。


「火月はいつもそうだ…」

なんて情けない声なのだろう。

それでも、言葉になっていただけマシだった。


力の入らなくなった指が解け、火月のシャツから離れていく。

先程まで胸倉を掴んでいた両手は、だらしなく下がってしまった。


「いつもいつも、そうやって‥俺の醜さを浮き彫りにする…」


「なっ!?俺はそんなつもりじゃ‥「なくてもそうなんだよ!!」」

俺は、目の前に在る火月の顔を睨み付けた。

「ここに何しに来たの?謝りに?そして許してくれるってわけ?そんなの嬉しくないっ!俺に同情してくれるのなら、怒れよ!俺が火月にしたことを怒ってよ…。俺は、火月に謝ってほしいわけじゃない…」
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