マミーの恋人
第1章  切ない片思い
「おっはよ~、黒ちゃん」



校門の前でわたしに声を掛けたのはスミレだった。



「おは。」



ぶっきらぼうにわたしは答えた。
寝癖がついているのがうざすぎる。



今朝ヘアアイロンを掛けようとして、
アイロンを加熱させてたらいつまでたっても熱くならない。




くっそ~サーモスタットがこわれたかあ・・・って叫んだらマミーがこういった。




「サーモスタットがついてるのは、普通のアイロン。ヘアアイロンにサーモスタット機能は、なし。ドライヤーで何とかしなさい」



だって・・・ふぃー。




「何、眠そうじゃん、さては昨日試験勉強がんばっちゃたねえ」




スミレはさわやかに笑った。
しかしけばいな・・・期末試験だっつーのにアゲハメイクしてるし。
しかも中坊だし。受験生だし・・・



こいつが偏差値70ちかい黎明館女学院を受けるなんて信じられない。




「ばぁか、試験勉強なんてしてねえし・・・夕べはネトゲーしてたし。夜中までやってたからねみぃよお・・・」




それはうそ。




本当は10時間試験勉強して、アメリカにいるマミーと別れたもと夫、
つまりわたしのパピーにライブチャットで英語を教わってた。ははは・・・




「じゃあ今回はあたしが1番いただきだね」




「何事も1番は良くない、せいぜい5番以内にいなさい、とうちのマミーが言ってたから、わたしは5番で手をうっておく」




これはマミーのお気に入りのミステリー作家の言葉で、それを読んだマミーが、




「ね、いつもあたしのいってるとおりでしょ」
と一人で納得していたのを思い出す。




ちなみにマミーは憧れの黎明館女子学院の卒業生だ。



中学からお受験して栄冠を勝ち取り大学まで軽くところてん方式に卒業してしまった。
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