マミーの恋人
「失礼します」


スミレは職員部屋の入り口で一礼して中に入った。



担任のパパこと佐久間先生はスミレに気がついて



自分の机に手招きした。



「君のことだから、わかっているよね」



先生は穏やかにスミレを見た。


「かなり疲れているみたいだね・・・目の下にはいつも隈ができてるし、
まつげが重そうで、眠そうに見えるし・・・顔色は蒼白し・・・
黎明館女子を受けるんで、相当受験勉強に精を出しているんだろうねぇ・・・
健康管理も受験には大事だから無理をしないように・・・ね」


「あ、はい・・・」


「期末試験前の、校外模試の成績ね、君、
都内の一部の生徒が受けた3000人のうち10番だったよ」


「そうですか」

別に嬉しそうでもなく、淡々と返事をする、スミレ。


「黎明館女子合格圏内は余裕だね。さて、その重そうなまつげを少し切ってあげたと思うんだけど、どうかな?」


   ・・・!!!!・・・


「あははは!!超ウケるんですけど、先生!!」



スミレは涙が出るほど笑った。



他の先生方が、何事かとスミレを見た。



ひとしきり、笑い転げてスミレはナミダを指でぬぐった。



「君の化粧品は、百均だろ?すぐに崩れてパンダ目になると、
家の高校生の娘がぼやいていたよ・・・」


パパはぼそっと付け足した。


スミレは、「わかりましたあ、化粧は落としてきます!!」


と元気よく答えて、失礼します、と職員室を出て行った。


切り替えの早いヤツ・・・真凛がいたらそうつぶやいただろう・・・


「まったく何かんがえてるんだか・・・」


スミレの背中を追いながら、佐久間先生は苦笑した。
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