マミーの恋人
カランコロン~~


ドアベルが鳴る。



返事がない。店は静かで白く明るい。



地中海のイメージの漂う白いでこぼこした壁。



中に入ると、地中海風の白い塗り壁に、銀のフレームに治まった



メルヘンチックな花の絵が吊り下げられている。




ほわっとしたミントグリーンのパステルカラーのバックに、トルコ桔梗らしきピンクの花



と白いカスミソウ、薄紫の忘れな草、そんな感じの花束が、飴色の花瓶に放射線状に



収まっている。



かわいいなあ、と見とれていると、中から「いらっしゃい」



静かな声がして、店の女主人さんが出てきた。



「予約していた、黒江ですけど」



「はい、承っています」



女性は30代半ば、細身の身体に細面の顔、黒い髪をひっつめにしている。



この感じ、どこかで見覚えが・・・・



と、思っていたら、マミーがこそっと、



「モジリアニ」



そうつぶやいた。



「モジリアニ?」



「ほら、あの画家が描く、女の人に似ていない?」



「だれが?」



「ここの、店長」



「あああああ、はいはい」



確かに。学校の美術の教科書に載っていた



あの、モジリアニの女性に似ている。



「マミーってば」



「なんですか?」



それは、失礼なのか、褒めことばなのかわかりかねますけど・・・



わたしはひとりつぶやく。



「モジリアニさん」



ね、似てますよね?



マミーはくすくす笑った。
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