マミーの恋人
如月先輩は、つかつかと店の中に入り、カウンターに近づく。



うそ、うそ、先輩、何で今ここにいるの~!!



わたしは真っ赤になってうつむく。



先輩はそんなわたしには気づかずに、「すみません~」



と、カウンターの中に居るモジリアニさんに向かって



声をかけた。




「はい、あ、如月君ね」




モジリアニさんは、なれた口調で先輩の名前を君付けで呼ぶ。




「月曜の展覧会の下準備、明日の午後で良かったですよね?」




「ええ、明日搬入になっているから大丈夫よ。手伝いは何人?」




「5人来ます」




「わかったわ。作品は車で搬入するのかしら?」




「はい、顧問の先生が車を出してくれるそうです」




「なら、こちらは問題ないわ。お茶でも飲んでいく?」




「ありがとうございます」




モジリアニさんはサイフォンで珈琲を入れ始めた。




バーナーに火をつけてお湯を沸かす。




やがてこぽこぽ音をたてて、珈琲のいい香がしてきた。



「あれ?」



たった今気がついたように、如月先輩がわたしを凝視した。




見ないで・・・先輩。



・・・・でもやっぱり、見て・・・



なんという二律背反な感情・・・・




「黒江、おまえなんでここにいるの?」




なんでって、何で先輩がここにいるのですか?




わたしは心の中で返答する。




「あら、お友達ですか?」




マミーがほんわり笑って尋ねた。


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