マミーの恋人
「んで、なんで如月先輩がスミレにメール寄越したの?」



 
わたしはナプキンでメガマックのソースがついた唇をぬぐった。




「美術展やるんだって。先輩の高校で。場所はピカソ。ほら、学校から歩いて20分くらいのさ、区立図書館の近くの画廊。お茶とかできるスペースがあってさ、あそこのレアチーズケーキ、野いちごソース掛けってめっちゃんまいんだよね」



スミレのスィーツ情報は侮れない。授業でパソコン教室使うときは、真っ先に教室行って、スィーツの検索してるし。




「確かに、あそこのレアチーズケーキは絶品だ。マミーが暇なときはたまにお茶しに行くよ。ただし、わたしは絵画に造詣が深いわけじゃない。マミーがキレイなものが好きだから付き合うだけさ」



「OK・・・んじゃ、美術展は来週の月曜からだからね。月曜の放課後、ピカソに行くって先輩にメールしとくからね。黒ちゃんは幸せだねえ・・・こんな面倒見のいい親友に恵
まれて」



スミレはいたずらっぽい顔をして微笑む。


かなり怖い・・・

どれくらい怖いかって夜中に保健室に忍び込んで、置いてある皮膚の剥がれた人体模型を盗んで来いと命令されるくらい、怖い。




やばいことに巻き込まれるぞぉ・・・警戒しろ、わたし・・・。



どうでもいいことだけど、思わずそんな想像をめぐらせてしまった。それくらいやばい。



なんでスミレが黒江真凛が如月聖也を好きなことを知ってるんだよぉ・・・



ココロの叫び!!



やめてくれぇ・・・如月先輩にお会いするなんて、好きすぎて、恥ずかしすぎて、卒倒し
ちゃうじゃねえかぁ・・・





「ふふふ、黒ちゃん、あたしは黒ちゃんのことは何でもお見通しだからね」





不敵に笑うスミレは、オーダーしたビッグマックと、照り焼きバーガーと、ポテトとナゲットとウーロン茶をキレイに平らげていた。
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