〜花魁〜
ドアが開いた事を告げる鐘がなり、目をやると
そこには、肩を上下に揺らしながら息切れをする横田 秀樹が立っていた。
『走ってくる程、大事な用なんですか?』
「早く行かな、君…帰りそうやし。」
よく、分かってる!なんて関心したものの
窓の外に目をやると、未だに降り続ける雨に帰れるハズがない。
『雨宿り中なんで、止むまで帰りませんよ。って、何か用なんでしょう?俺、何かしました?』
「今日は逃がさないで♪」
そう言って、ニヤニヤと笑う横田を見て…不快感を覚える。
『どう言う事っすか?』
「合コン♪」
三十路手前の男が、ピースをしながら合コン♪って…。
『行きません。絶対に行かん!!』
「お前、これ断ったら8回目やから!飛ばすぞ?」
断って来た回数を数えている事も突っ込みどころやけど…
――それよりも
『それ、職権濫用って奴?きたねぇぞー?』
気付けば、いつの間にかタメ語になっている始末……
「もちろん、行くよね?」
口元は上がっているのに、目が笑っていない横田は…
絶対に連れて行く!!と、言わんばかりのオーラを放っていて…
挙げ句、上司と言う権力まで使われて
断るに断れない状況に…仕方なく首を縦に振った。
「話せば分かるやん!!物分かり良い人、嫌いじゃないよ♪」
『脅迫まがいですけどね。恨まれたらたまらんし一度だけですよ。』
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