繋いだ糸のその色を
「――――二宮弥生!!!!!」


それは叫び声ともとれた。

教室中に響いたその声は、勿論熟睡していた二宮の耳にも入ったわけで
あの安らかな寝顔は、一瞬にしパニックになる二宮の表情へ写った。

教室に居た生徒全員が
声の主に注目していた。


――――如月真帆。

彼女は肩で息をして、ドア越しに立っていた。

「あ・・・如月さん・・・?」

今の今まで寝ていた二宮は
もっと分けが解らず、混乱に陥っている。

クラスの注目など構わず
真帆が真っ直ぐこっちに向かってくるではないか。

バンッと二宮の机に手を置き
二宮を真っ直ぐな瞳が見つめる。


「――――今・・・夢は見た?」
「え?」

「夢・・・見た?内容は?」

その形相で、その質問。
おかしいし、意味が解らない。

すっかり眼が覚めた二宮は
少し考え
「見たけど・・・・覚えてない・・・」と呟いた。

真帆は小さく安堵のため息をつく。

「まだ初期段階か―――」

真帆が小声で呟いた。いや、そう言った気がした。

「二宮真帆」
最後に真帆は言った。

「あまり寝るな、夢を見るな


 ―――これは忠告だ」

忠告?

キョトンとしている二宮の前で
真帆はクルッと周り教室を出て行った。

つーか俺完全に無視されていた。

今更思った静に、二宮が瞳を向ける。
「あれ・・・羽時くん居たの・・・?」
こいつも今気付いたのか。

軽くへこむ静に、二宮が首を傾げる。

「あの・・・私、如月さんと何かあったの・・・?」

二宮が解らないのなら
俺が解るはずない。

二宮の真似して首を傾げた静は
手に握られたモノをギュッと強く掴んだ。


二宮が起きたとき
とっさに学ランの下に隠した

教科書を。

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