繋いだ糸のその色を
その日は、夏だというのに大降りの雨だった。

「あ?車で行ったァ?俺がどんだけ待ってたと思うんだよ、真二!」

売店の雨よけの下、静の声だけが響く。
その手に持った携帯から、
『アハハハ―、悪い。』
と、真二と呼ばれた金髪野郎の声が聞こえる。

静は一言
「アメリカ人かお前はッ!」
と一括し電話を切った。

ほら、アレだ。
英語の教科書の外人はやたら失礼だもの。

彼は友達ではありません、と誰が外国へ行って使うものか。

それはさておき、
静は一人寂しく傘をさし学校へ向かう。

雨の音がやたら、五月蝿い。
たぶん一人で居るからだろう。

つ―か、今は完全遅刻だ。

征服を来た奴は一人も見当たらない。
今更走ったって間に合わないし、服汚れるし・・・・

―――って、あら。

静はふいに、眼の前の少女に眼がうつる。

何だ―、いるじぇねえか。セーラー服の少女が。しかも同じ高校だ。

そこで、静の足も止まる。

それは別に、「一緒に行こうよ☆」なんてフレンドリーに話しかけようと思ったからじゃない。


彼女の不審さに止まっただけだ。


傘もささない小さな肩に、雨が容赦なくうちつける。
だが少女は気にもせず、両手でしっかり固定した使い捨てカメラで、じ―ッと獲物を狙うかのように、シャッターを幾度となく押している。

彼女の目線の先にあるのは、一本の電信柱。

そこにカメラに収めるだけの”美”はあるんだろうか――


これを不審と言わずになんという。



< 2 / 66 >

この作品をシェア

pagetop