繋いだ糸のその色を
今は放課後。たぶん。

教室から出て行く生徒とは反対に
教室に駆け込む生徒一名。

「二宮さん!」

呼びかけた静を見てやはり逃げ出そうとした、二宮の腕を今度は逃さずガシッと掴む。

ストーカーが通り魔に進化した。

「っていうか何で逃げるの!?」
「だ・・・だって羽時くん、意地悪だし・・・こっ怖いしっ」
泣きそうになりながら言う二宮に
泣きそうになった静のポケットからカサッと紙切れが落ちる。

気付いて拾った二宮が、絶句した。
静の顔が青くなる。

雨の日の藍色の壁――の写真。

「なっ何で羽時くんが持ってるの!?ノートに挟んでたはずなのに・・・!?」
「あっ――・・・落ちてたんだよ!拾ったの!!」

そんなはずがあるものか。二宮の眼が訴える。
そこで二宮はある予感を捕らえる。――それは時として直感とも呼ぶ。

「もしかして・・・・――私のノート見た?」

やっば・・・・。

静は顔をそらした。
これでノート見たのばれたら嫌われる!!!
ただでさえ嫌われてるのに、もっと嫌われるってどんだけ!!

今度は「死ね!」とか言われるかも――
静は覚悟する。

「・・・・・・・」
「・・・・・・あれ?」

ずっと無言の二宮に
思わず視線を戻すと、そこには今にも涙が零れ落ちそうな眼をした彼女がいた。

わー・・・・
これは覚悟してなかった。

「絶対ッ人に見られたくなかったのに!!!
 やだアァアァア

 退いたよね!壁ばっか撮ってまとめてるとかキモイよねッ!!!」

その瞬間、二宮はうずくまり泣き出した。

教室に残っているクラスメイト等が、冷たい眼で見てくる。女を泣かせる男の図完成。

最低な図。

だが不思議と静は冷静に居られた。
二宮と同じようにしゃがんで、床に落ちた写真を拾い、丁寧にのばす。

そしてじっくり眺めてみた。
うん。やっぱり。

「ねえ 俺この写真、すっごい綺麗だと思うんだけど・・・・俺ってキモイ?」

「え?」と二宮が眼を丸くして顔を上げる。その眼からゆっくりまた雫が落ちた。

あ 可愛い。


不思議なものだ。

雨に濡れた壁の雫が、フラッシュで光ってライトみたいに藍色の壁を照らすんだから。
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