繋いだ糸のその色を
その日から、二宮は静が凄い形相で近づいても、絶句するだけで逃げる事はなくなった。

ま 小さな進歩。

「―――羽時くん、もう授業始まるけど・・・屋上行かないの?」

「ちょっと二宮さん、授業中に屋上行って良いと思ってんの!?」

それが毎時間、ふらふらしてる奴が言う言葉か。

授業に出る。
自分も進歩して見る事にした。

勿論、授業目的じゃないけど。

「あ 龍ノ原くんも?」二宮が言う。

ちくしょう。邪魔が入った。

「あれ?何その顔?悪いねー俺も今日は授業受ける♪」
静を見るや、そう言った真二がドガッとイスに座る。竜ノ原ってのは真二の苗字だ。

「お前は屋上で寝とけよ・・・・」

静が顔をしかめると、真二が顔をにやつかせた。
「へぇー・・・1人じゃなんもできねぇとか言ってた奴が気張るじゃない」

どこまでも憎い奴め。

授業が始まる。

先生の話を右耳で聞いて左耳へ流す。
自然と静の視線が二宮へ写った。

その時、二宮からして斜め後ろにいる真帆に気付いた。
視線が静側に向けられていた。

俺を見ている――?
違う。

二宮を見ている。

鈍感な二宮は全く気付いていない。
次の時間も、次の時間も、真帆は二宮を見ていた。

変だ。
俺にもましてストーカー?

「――変だよなアレ」
後ろから声がし振り向くと、真二が顎を真帆の方に軽く振る。

真二も気付いてる。

気付いていないのは二宮だけ。
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