繋いだ糸のその色を

疑う世界

「ただの貧血なのに・・・・そんな騒ぐ事じゃないよ・・・」

保健室のベットで、二宮はゆっくり言った。

閉じていた眼を開くと
ベット脇で眼をウルウルさせた静が居る。

なんか子犬みたいだ。
いつもの静を見ては絶対思わない事が頭に浮かんだ。

二宮は体を起こそうとしたが、重くて動かない。諦めてシーツをギュッと握り締める。

「最近、良くある事だから――そんな心配しないでよ」

なだめるように言った二宮の一言は、
静を余計心配させたようだった。

「最近って・・・っ 二宮さんそんな体調崩してるの?」

「え・・・えっと・・・体調が悪いわけじゃないんだけど・・・眠いっていうか・・・」

寝不足?
静が聞くと、二宮はちゃんと寝てると首を横に振った。

「いつも意識が飛んじゃった時、同じ夢を見るの」

夢――
一瞬、真帆の顔が浮かぶ。

「内容は最後まで思い出せないんだけど・・・・
 ピエロが出てきて

 『こっちへおいで』って手まねきしてて」

思ったより幼稚な内容で
静は小さく笑う。二宮が睨んできたので「それで?」と促す。

「後は・・・覚えてない。

 でもすっごく幸せな夢だと思う
 だから時々、本当はコッチが夢で――夢の中が現実なんじゃないかなーって思う

 っていうか、そうだといいな」

静はチクリと胸に何かが刺さるのを感じた。

俺の居る現実より
ピエロが招く夢の中――か

「あー 俺もそういうのある」
その感情を無視して、静は笑って言った。

「もしかして俺は、カプセルの中で眠ってて
 今見てるモノ全てが、機会が見せる幻想で――

 眼が覚めたら、全て無くなってる」

真二も
眼の前にいる二宮さんも全て――


自分で言ってて、耳が痛くなった。

かなりの現実逃避。
今更だけど。

二宮がクスクス笑った。

「羽時くんって変な妄想するね」

ぐえ。
一直線に言われた。認めざるおえない。


保健室に
さわさわと初夏の風が通り過ぎた。



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