繋いだ糸のその色を
その頃真二は保健室のドアの前に居た。

ドアに手をかけるものの、動かさない。

妙に・・・――静かじゃないか?
もしかして静の野郎、弱った二宮にスキをついて・・・
真っ最中だったりしたらどうしよ・・・

真剣に悩む真二の後ろで、二つの足音が聞こえた。

振り返ると、双子の転校生が立っていた。
「あー・・・保健室に用?今はちょっと――」

「中に二宮弥生が居るでしょう
 そこをどいて」

保健室に入ろうとする真帆を
真二は手を広げ慌てて制す。

「待て待て待て!!今、最中だったらどうするんだよ!」

「最中?」

何の最中だ?と真帆が首を傾げる。
その横から、今度は弟がドアに手をかけた。

「ちょっと待てってば!」

真二は少々荒い手つきで、弟の肩に手を置き押す。


それが、まぁ。気に障ったんだ。


「どけ・・・・」
「あ?何て言った?」
「どけ、と言ってるんだよ――!」

それは一瞬と言えようか。

弟の足が、真二の足を捉え、肩に乗せた手を軸に勢いに任せ――

ドンッ――と鈍い音で、グルンッと柔道の投げ技のどとく回された真二が床に叩きつけられる。

「った・・・・・―――っ」

「流石元チームメンバーだけあって、受身は取れたみたいだな」
あんなに大きな技をかけたというのに、弟は涼しい顔で言い放った。

「そういうのは控えろと言っただろ、椿(つばき)」
真帆は呆れて呟く。

真二は、体をゆっくり起こした。
―――大丈夫。ちゃんと動く。

「ちょっと行き成りコレは酷いんじゃないの・・・っ
 それに俺をチームの阿呆どもと一緒にすんな

 えっと、椿くん?」

椿くん?
弟――椿はその言葉に敏感に反応した。

勘に触りやすいたちらしい。
俺にとっちゃ好都合。

真二はニカッと笑う。
それがまた気に障る。それは計算済み。

無表情で、殴りかかった椿の拳を
真二はガシッと掴んだ。


「二宮がどうとか俺は知らねーけど、売られたケンカは買うのが常識だよね?」


その眼はもう笑っていなかった。
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