繋いだ糸のその色を
眼を見開いた椿の、腹に思いっきり蹴りを入れる。
椿が声にならない叫びを上げて、横にふらついた。

やっぱりこんなもんか。
真二は次の拳を振り上げる。






外が騒がしい。

静は丸いイスから立ち上がる。
二宮が寝てしまって、保健室は静寂にあり、外の音がやけに聞こえる。

五月蝿いな
中に病人が居るっていうのに――
ケンカでもしてるんだろうか。


そういえば煙草を買いに言った真二が戻ってこない。
真二がいれば、ケンカなら止めてくれるだろうが俺じゃどうにもできねーな。

そんな弱気な気持ちのまま
静はガラッとドアを開けた。

「――――・・・・・何やってんの 真二」


ケンカしてるのがコイツじゃ
止められないか。

「あ ごめんごめん五月蝿かった?」
真二が、はははと笑った。

その下に押さえ込まれた椿。頬に殴られた後が痛々しく残っている。

真二の注意が静へ行った為、僅かに力が緩んだ。そのスキに椿は押さえ込まれた腕を、なぎ払う。

「おっと―っ」
真二は慌ててかわし立ち上がった。

逃れられた椿は、ケンカを観戦していた真帆の隣に立つ。
一方の真二は静の隣に。

この真帆は、味方の応援もせずただ見ていただけである。

「やっぱり貴方達は何かと邪魔になりそうね」
真帆が冷たく言った。

「だったら今の内に対処すべき――」
椿が立てかけられていた箒を手した。
そう確認したその瞬間。

椿は窓に向け箒を、振り落とした。



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