繋いだ糸のその色を
――そんな事言われなくても解ってる。

逃げたい。
二宮は女子の間をサッと通って走り出した。

「わっ 逃げたッ」

後方からおもしろがる声と、追いかけて来る足音が聞こえてくる。

ウザイと、キモイと、そう思うのなら
構わないでくれ。
誰にも求められず、愛されていない事など知っている。
怖ければ立ち向かう勇気などない。
弱い私だと気付いてるのに
追いかけてこないで。

惨めな思いは十分、味わった。


「――――二宮さん!!」

声は後方ではなく前方から聞こえた。

曲がり角から急に現れた人影に
驚いて二宮は派手に転ぶ。

「わー 病人が走っちゃ駄目でしょ」

ヒーローはいつだって、ありえないってぐらいな良いタイミングで現れる。
いつかの漫画みたいに。

「・・・・羽時くん?」

二宮の見上げた視線の先に
静が立っている。

「羽時くんですよ」
乱暴に二宮の腕をとり立たせる。

二宮を追いかけてきた女子達が静を見て驚いて足を止める。
二宮のように転びはしなかったが。

「随分と二宮さんと仲良いみたいね」
静が低く呟いた。
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