繋いだ糸のその色を
「――はっ羽時くん!手痛いよ・・・っ」

しばらくどこへ行くともなく、歩いていた静は二宮の声で我に返る。

「あっごめんっ」
静は慌てて二宮の手を離す。

「とりあえず・・・どっか座ろ?」
僅かに赤くなった手をさすりながら、二宮が無理した笑顔で言った。

静と二宮は中庭の、石造りの花壇の上に腰を下ろした。
しばしの沈黙が続き
やがて二宮が口を開く。

「知ってたんだね 私が虐められてるの」
静は頷かなかった。

代わりに、鞄からドンッと重なった教科書を取り出した。
「やる」
「え?」
「二宮さんの教科書全部捨てちゃったから、俺のあげる」
「え!?」
詳しく聞こうとしたが答えてくれそうにないので、二宮は諦めて教科書を手にとる。

見事なまでに綺麗な教科書。
全く使われていない事が解る。本当に静は勉強してないらしい。

――気が狂いそうになる、あの落書きの文字もない。

「一緒に使おうか 羽時くん」

二宮は笑って言った。
言われた静は、「はい!!」と即答。素直だ。
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