繋いだ糸のその色を

ヒーロー

しばらく歩くと、二人の家への道は別れる。やり気れないような思いのまま、静は遠ざかる二宮に手を振り、家路を辿った。

毎度の事、し―んとした家に帰り
家事をある程度済ませて
静は再び家を出た。

向かうは、いつもの売店前―――
「よ その顔、何かあったん?」
いつものままに、ニカッと笑う真二が居た。

なぜか気がぬけるような、そんな感覚を覚え、静もニカッと笑って見せた。


会うがいなや、静は手ぶり素振りで今日の事を話し出した。
「へぇー 羽時くんはすっかりヒーローってわけね」
と、話を聞き終わった真二がニヤニヤして言うから
「俺は最初からヒーローだよ」
と返してやる。

「俺、ガキの頃は全く戦隊モノとか憧れなかったのに、今は本気でなりてーと思うんだよね」

何かと思えばそんな事を言い出す静。
今がガキなのか。
しっかりガキである真二は呆れつつ、「何でだよ」と聞いてみる。

その反応に少し不安そうにしつつ
静は口を開く。

「だってさ、ヒーローは自分の意思に無関係に、戦わなくちゃいけないわけだろ

 なぜなら”ヒーロー”という存在だから

 それなら、余計な事考えなくていいんだよ」

静にとっての余計な事

―――自分がどうしてこんな事をしてるのか
―――誰のためにやってるのか
―――無責任な正義感を振り回してるだけじゃないか

そして――この戦うという状況から逃げ出す方法


ヒーローは、そういう事を考えてはいけない。
否、考えたとしてそれが自分の行動に関わる事はない

なぜなら”ヒーロー”は”戦う”という宿命にあるから

上手く伝わるだろうか
自分でも良く解らないこの感覚が

言わなくとも、真二は意味が解ったらしい。

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