繋いだ糸のその色を
「―――・・・・・・」

声が届かなかったんだろうか。
少女は、カメラのレンズから目を離さない。

「おい 聞いてんのか ――――ッッ!!!」

少女の肩がビクッと動き、眼を見開いてバッと顔をこっちに向ける。

静は、しまった。とたじろいた。


―――――厄介な癖その2だ。

別に怒ってもないし、怖がらすつもりじゃないが
すぐに口調が荒々しくなる。
しかも、声が普通より低いときた。

これじゃ真二だな

「――・・・えっと、ごめん あの何して・・・」

「ごめんなさい!!!」

――ごめんなさい?

は?と顔をしかめた瞬間、少女はカメラを鞄に押し込んで走り出した。

「ちょっ・・・何であやまんの!?」

少女は水溜りをけちらして、駆けて行く。


何だコレ・・・俺がいじめたみてえじゃねえか・・・

ふいに虚しくなって、一人舌打ちをする。
最近イライラしやすい。カルシウム取らなきゃな。

学校だった、と思い出し
静はすっきりしないまま歩き出す。

その向こうに、見慣れた姿がうつった。


「よっ 遅せーから迎えに来てやった♪」

そいつは手をあげ、陽気に笑う


「あー 裏切りの真二が何で居るんだ」
苦笑のつもりだろうか。
静の皮肉に、真二は反省の色のないまっさらな笑顔を見せる。

手に買いたての煙草。
迎えに来たとか言って、どうせ売店に行った帰りだろう。

少女とは対象な真二のがっちりした肩に
やはり雨が打ち付けている。

「何で”みんな”傘もたないわけ・・・・・・」

「みんな?」

「別になんでもない」
そそくさと歩き出す静の傘に、真二が無理やり入ってきた。

案の定、静に追い出された真二
「何だよー 俺らの仲だろー」
そう言う、無垢な笑顔にも もはや寒気を感じる。

「やめろ 気持ち悪い!!

 ―――っ何だよその顔!可愛くない!!」


あの厄介な癖その2は
コイツのせいだ――


遠くの方で、1時間目の終わる鐘の音が響いた。

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