繋いだ糸のその色を
そんな静に、二宮が無理にニッコリ笑って見せる。
「さっ・・・さっき転んだのっ階段からっ!」
「嘘つかないで!!」
「お・・おい 静――」真二が呼ぶ。

「―――お願いだから」

静の声は、消え入りそうなぐらい、か細い声だった。

「ちゃんと 話してよ・・・・」

すがる様に言った静の言葉に、二宮の笑みがゆっくりと消えていく。顔を見られたくないかのように、二宮は俯いた。

「静 腕、放してやれ」
真二に言われ、静が二宮の腕を話すと、二宮が泣いているのに気付いた。

「何があったかなんて・・・私にも解んないよ・・・っ」
嗚咽の合間、合間に小さく二宮の声が聞こえる。

「今、解る事だけを話せばいいよ 二宮」
いつもの真二とは想像もつかないような、優しい声で真二が促した。

二宮はポロポロと涙が落ちる瞳で、静と真二の顔をゆっくり見て、耐え切れず視線を地面に戻した。

「家に帰ったら・・・いきなりお父さんに殴られた・・・っ」

そしてゆっくり言った。

「なっ・・・何で!?」
「そんなの知らないよ!いつも、いきなり殴られて・・・お母さんも助けてくれないし・・・っ」

ショックだった。

眼の前で、大好きな人が悲しみ苦しんで泣いて、訴えている。
それなのに、今の今まで自分は何も知らず、何もできず、ただ立ち尽くしているだけだ。

静は、二宮の手をギュッと握った。
離してしまえば、きっとどこか遠くへ行ってしまう。

そんな気がしたから。

「―――父さんも母さんも私のことなんか・・・ッ」
投げ捨てるように、二宮が言った。


「生きてても意味ないって思ってるんだよ!!!!」



泣き崩れた二宮に、腕を回そうとして、サッとひっこめた。

彼女にとって俺は、
こんな事していい立場なの?

そんな事考える自分に、
腹が立って、殺したくなって、悲しくなった。

結局その手を、ゆっくり頭に乗せてクシャクシャ撫でてやり、自分の肩によせた。

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