繋いだ糸のその色を

一緒に行こう

町外れの廃校の一角に人の気配があった。
昼だというのに、明かりは窓から差し込む一筋の光だけ、後は真っ暗。少し肌寒い。
そこは静と真二の、ガキの頃からの隠れ場所で、秘密の場所―――

そこに真二以外と入るのは初めてだった

「二宮さん、大丈夫・・・?」
部屋の隅でうずくまる二宮に、静が言うと、二宮はゆっくり頷いた。

どういうわけか逃げてきた
あの双子が何者なのか、何がしたいかなんて解らない

二宮が『逃げよう』と言った。だから逃げた。

でも、いくら静だってこれ以上無知のまま進む事はできない。

「二宮さん」
静は、二宮の頬をできるだけ優しく抱えてグイッと自分の眼線に合わせる。

「あの双子は何?『夢』を『狩る』ってどういう事?」

もっと優しく言おうと思ったのに、焦って口調が強くなった。だが二宮は顔色一つ変えずに、静の眼を見返す。

「ピエロが言ってた あの二人は、私から幸せをとるんだよって」

二宮がゆっくり微笑んだ。

「羽時くんにだけ教えてあげる、私の秘密
 私、夢の世界へ行けるんだよ
 これからは、夢の世界でピエロと暮らすの」

唐突に言われて、静は眼を見開いた。

何を言ってる?頭が変になったのか?
いつもの二宮ではない。なのにその眼が正気だった。

「―――っ 二宮さん、何言ってるの!? 
 そんな世界あるはずないんだよ!

 眼を覚ませ!!」

静は、思わず手に力が入った。
なのに変わらず二宮は微笑んでいる。

気が狂ってる――?

二宮はその冷えた手で、静の手をゆっくり握った。

「信じられないなら、一緒に行こう―――」

「どこへ?」そう聞く前に、TVの画面が消えるようにプツンと、静の意識はあっけなく途切れた。



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