繋いだ糸のその色を
真二は、微かに眼を細める。
恐れていた最悪の事――静の馬鹿野郎め


椿が、今度は静の閉じた眼を開かせる。
「他者を自らの『悪夢』へ連れて行けるのも、『夢潰し』に対応する力って奴だから

 だけど、連れて行かれたのはこの羽時静にも原因はあるからな」

椿の言葉に「解ってる」と力なく真二は言い返す。


つまり、静も現実に幸せを感じていなかったという事――――
真二はグッと拳を握る。帰ってきたら一発、殴ってやろう。

「―――これから 夢払い をする」

言った椿が、真二に下がるよう合図する。
真二は、何もできない事を苦い思いで理解し後ろへ5歩ほど退いた。

椿と真帆は、チョークを取り出し地面に何やら呪文のような奇妙な図面を書き出した。
夢払いの下準備って奴だろうか?

「ンだよ 夢払いって時間がかかるなア」
その作業の長さと細かさに、思わず真二は口に出る。

そう言われるのは慣れているらしかった。
椿が、視線を地面のまま口を開く。

「そんなパッとできる程、簡単なモノじゃないからね。名前の割りに、こういう精密な作業が元になってるんだよ―――っと。」

真帆と椿が、スッと立つ。

合間に静と二宮を置き
向き合う双子―――

どこかズレタ、滑稽な鏡のようだった。


「それじゃ」
椿が、真帆の眼を見る。

「やりますか」
真帆が小さく呟いた。
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