繋いだ糸のその色を

嫌い悪い

「――――どっ・・・どうして?」
あからさまに二宮が戸惑う。

真っ白な世界が、二宮の感情と同調してゆっくりと黒く濁っていく。

「高原さん達に、あんな事したから・・・?」
二宮の眼から涙がポロポロこぼれた。

「でも高原さん達が、あんな嫌がらせとかして悪いんだよ!こんな事、考えたっていいじゃん!」

人間なんだから。解ってる。誰もが考える事だもん。俺だって・・・いや、これはいいや。

「でも全部夢だ」
静がゆっくり言う。
「あの両親だって、高原達だって結局は全部――」
「――――夢で何が悪いの!?」

二宮が叫んだ。


どんなに現実に期待したって、どんなに正しく生きたって何も良い事なんかありはしなかった。

夢に溺れて、弱いだとか醜いだとかそんなプライドさえもズタズタだってのに。
周りの眼は、もう気にしたくない。

ただ普通に暮らしたい。
それを願って、何が悪いの?

それさえできない現実を
捨てて何が悪いっていうわけ?


「悪いよ」
二宮の思いを踏みにじるように静が言った。
「っていうかあのね、俺二宮さんが居たら絶対幸せになれるわけ」

二宮が「は?」て顔で一時停止して、困った結果「そんなの知らないよ」と呟いた。

アイタタタ....俺まじで痛い

―――でもここで引き下がったら男が廃るってもんですよね。
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