She and I・・・
「--この研究所に落雷があった・・・」

落雷・・・

「一切の電源が落ちた。無停電電源装置の設備があったにもかかわらず」

「千夏は・・・?」


「無停電電源装置は瞬時に再起動し、電源は復活した。しかしコールドスリープのコントロール系統はコマンドを受け付けなくなってしまった」

「千夏は・・・?」

千夏はどうなってしまったのか・・・
僕は自分でも気付かぬうちに、ただ
千夏は?
千夏は?
と繰り返していた。

「強制的に電源を切ることは、解凍の手順を無視することになり、危険が伴う賭けだった」

賭け・・・

僕も同じ軌道で戻れるという保障もないまま
一か八かの賭けで反転し、
漂流していた宇宙から戻ったばかりだ。

人生は

いたるところに

一か八かの賭けが転がっているのか?


「決断のつけられないままでいる私たちの前で、コンピューターは暴走したまま生命維持のコントロールも失った」

「・・・」

「千夏は眠るように・・・いや眠ったまま亡くなった・・・」

「?」

「ギリギリで生命活動を維持していたところに急激な温度変化を受けたせいだと考えている・・・」

話の道筋はわかったが、
事態を理解したくないという心のせいで、
何を言われているのかわからなかった。

きっとポカンとした顔をしていたのだろう。

教授が

「奈良くん。千夏はもう生きてはいない・・・死んだんだ」

とふたたび言った・・・

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