She and I・・・
「--千夏は常に君のことを想っていたよ」
教授が僕の考えていたことは知らずに言う。


「すみませんでした」
謝っていた。


「君が謝ることはない。私が千夏に見せてはいけない夢をみせてしまったのだ」

「そんな・・・」

「私はね、娘は君にやったつもりだったんだ。オートバイで出掛けると言われた日、娘はこの男に嫁ぐのだと思ったのだ」

「え?」

「現実に結婚してこの家から嫁に出すまでは、君から預かっているのだと私は考えていた」

教授がそんなことを考えていたなんて。

「だから、謝るのは私の方だ。娘を君に渡せなくてすまなかった」

それまで黙っていた先輩も
「父がそんな思いでいることに、僕は気が付かなかった。それなのに君に探査任務を勧めてしまった。奈良くん、本当にすまない」
と頭をさげた。

< 215 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop