She and I・・・
「ただいま」
とその女性は言った。
「母さん、奈良君です」
「奈良君、母です」
と先輩が二人にお互いを紹介した。
「はじめまして。奈良です。本日はお招きありがとうございます」
「冬雄の母です。こんな遠くまでごめんなさいね。あげくにぎりぎりまでお買い物なんてしてお恥ずかしいわ。」
これから食事を作るから、たくさん食べてくれというようなことをいいながら先に家に入っていった。
「きれいな方ですね」
それにかなり若く見えた。彼女と姉妹といっても通じるのではないか、というくらい。
故郷の丸々とした母親の姿が一瞬浮かんで消えた。
「奈良さんて、そういうことスラッと言えちゃうんですね。少し意外です」
彼女がツンとした感じで言う。
「本人に面と向かっては言えませんよ。きれいなお母さんでいいですねってほめてるんです。正直に」
「良く言われます」
表情を見ると本当に怒っているわけではないのがわかる。
「親子だけに似てますね」
「それも良く言われます」
「何年後かにはあなたも・・・」
「三十年後の姿なんて勝手に想像しないでください」
しまった。一言余計だった。
「やあやあ、待たせている間もこんな調子で奈良君を困らせていたのでなければ良いのだけど」
先輩が割って入って来た。