She and I・・・
「ところが、それっきり」

「それっきり?」

「彼の操縦する宇宙船は、帰ってこなかったの」

「・・・」

--今の私たちのように宇宙の漂流者になってしまったのか、何かの事故にあったのか・・・


その頃はまだ予備の物資を積む習慣も余裕もなかった。

帰還予定日を過ぎて、彼は亡くなったという扱いになったわ・・・
記録上は。

それでも私は待ち続けた。

私は信じられなかったの。

必ずここへ帰ってくると

笑顔で出航した彼が帰ってこないなんて。

だから、彼を待ち続けた。

あまりに長い間だったから、
正直、なんで帰ってこないのかと恨んだこともあるわ。

でも、あなたやクリスを見て思ったの。

彼もきっと帰りたかっただろうって。

必死に帰る努力をしただろうって。

だから、こんな年齢になるまで一人で待ち続けたことを良かったと思えたわ。

必死に帰ろうとした、彼に恥ずかしくないって--

「--きっとあなたの大切な人も待っているわ。だから、なんとしてでも帰るという気持ちを捨てずにがんばりましょう」

そう言うサラはとても美しく見えた。

この女性(ヒト)はまだ、その帰ってこない彼に恋しているのだと思った。
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