She and I・・・
ダンも操縦席に並ぶとすぐに、クリスの様子を尋ねてきた。

みんなクリスを心配しているのだ。

クリスとの会話を伝えた。
ダンは途中から顔をしかめながら聞いていた。

そのあと、アンヌにクリスのことを伝えた時の反応を話すと、
しかめていた眉がぴくりと動いた。

「ほう」

と一言だけ言った。

感心した、見直したという感じの言葉が続きそうな”ほう”だった。

僕には想像のつかない何かが進行しているのか?


早く帰りたい一心の僕も、少し不安になってきた。

「何かあるんでしょうか?」

「おまえはないのか?」

「・・・無事に帰れるかどうか不安です」

帰れるかどうかじゃない。
帰るんだ。

という叱責がとんでくるかと思ったが違っていた。

「誰もが不安だということだ」

はぐらかされた気がした。

「ダン、あなたには不安はないのですか?」

「クリスやおまえのように、俺は誰かを地上に待たせているわけではないからな」

「待たせていなければ不安ではないのですか?」

「・・・不安だ。地上を離れてもうすぐ一年が経とうとしている。待たせているだけでなく、こちらも孤独に耐えているのだし、今は確かなことは何もないのだから・・・」

そしてふと思い付いたように、

「・・・アンヌはこの船に誰か好きな奴がいるのか・・・」とつぶやいていた。

それはあなたですよ、とは言えないので黙っていた。

< 92 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop