すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
「ハッ、はい!」
全員コクコクと頷いて、一点に視線は注がれている。
「それは良かった。
それじゃあ、蘭、そろそろ帰ろうか?」
反応を見届けると、こちらへ笑顔で話を振ってきて。
あたしの肩に手を置いままで、歩き始めてしまう。
バタン――
準備室を退出すると、拓海がドアを閉めた。
廊下へ出た途端、初夏の風が頬を掠めていく。
「蘭…、大丈夫だった?」
ようやく肩から手を離すと、心配そうに眺めていて。
「う、うん・・・」
その表情に、あたしは何も言えなかったけれど。
涙を堪えた分だけ、心臓がキューっと締めつけられていた。
拓海にとってあたしは、ただの幼馴染み・・・
あたしと拓海は、世界がチガウ・・・
初めて自覚したのは、このトキだったね。
それでも貴方を、愛してしまうなんて――
【自覚の日・END】