すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
そうして振り返れば、ビクッと怯えた表情をされるし。
「ハァ・・・」
苛立たしさを抑えようと、溜め息も出てしまう。
「申し訳ございません・・・」
そんな俺に再び謝ってから、ヒール音を鳴らして駆けてくる。
今日は、フルアップのヘアスタイル。
ライトベージュのパンツスーツ。
黒くて高ヒールのパンプス。
蘭には重役秘書の中で一番地味な格好を、敢えてさせている。
いや…、これでも少し気に入らない――
日差しが反射してキラキラ輝く、艶々な唇。
長い睫毛を瞬かせる、クリッと丸い瞳。
首筋や胸元から覗く、真っ白な肌色。
俺のモノだと言うのに、どうして周りに晒す必要がある?
周りの眼なんて、オマエは気づいていないだろう?