すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
だいたい、拓海ママって呼んじゃダメっていう。
その理由を、あたしは聞いてるのに・・・
「いつか…、蘭にも分かるわ。
バスが来るし、もう終わりね!」
「えーー!?」
何度尋ねてみても、何も教えてくれなかった。
「それじゃあ、行ってきまーす!」
バスに乗ると、手を振って幼稚園へ向かったあたし。
でも、この日以来、“奥さま”って呼ぶようにしたの。
ママが怒ったり、悲しむ顔を見たくなかったから――
幼すぎて、何も分からなかったんだね・・・
境界線を張り巡らせて、距離を保とうとしていたのに。
近づきすぎて、傷つくのを守ってくれていたのに。
陰ではずっと、私の未来を心配していたコトも。
好きにならないでと、祈っていたコトにさえ。
何にも気づく訳もなく、貴方を愛してしまうなんて・・・
―蘭side―
【幼き日END】