すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
メルセデスの種明かし・拓海視点
プロポーズをしたあと、泣き止んだ蘭を自宅から連れ出した。
小さな手を、二度と離さないようにとキュッと握り締めたまま…。
それでも真っ赤な眼をして、相変わらず俯き加減で歩く。
歩調をワザと遅らせて、俺との距離を一定に離して歩く。
すべてが秘書をする上での処世術だと、解っているが…。
気づかれないよう、本当に小さく溜め息をついて歩を止めると。
手は繋いだままで、俺に続いて止まった蘭をチラリと一視した。
「今日は、俺の誕生日だと知ってるよな…?」
「え…、うん…?」
尋ねられて、コクンと頷く姿にジンワリと嬉しさが込み上げる。