すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
FOXEYが齎した笑顔・理紗子視点
「健斗さん、お帰りなさい!」
「ただいま、理紗子」
久しぶりに多忙の中を、日本へと帰国した健人さんに抱きついた。
そうして愛するヒトとの時間を楽しむ前に、まずは“本来の用件”があって。
数日前からソワソワしていた事は、今もなお秘密だけれど。
拓海と蘭ちゃんの結婚を、ようやく承諾出来る事が嬉しかったの…――
「ありがとうございます」
「・・・っ」
“認めるよ”と、言葉少なく2人に告げた健斗さん。
彼に深々と一礼をした息子の姿を見て、熱いモノが込み上げそうだった。
プレッシャーが掛かる状況では、心を鬼にして厳しく育てなければならなくて。
本当は優しくして…、伸び伸びと育てたいのに…。
すべては、東条の名がソレを阻んできたからこそ。
必死で堪えてきた辛さが拓海の笑顔で、ようやく報われたと思えた。
忘れられないトキと、駆け巡る昔の記憶が交錯している中で。
拓海と蘭ちゃんの結婚への道程が、始まった気がしたの・・・