すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
笑顔でいる事と、本音を出さない事。
これが子供の俺に求められた、母の要望・・・
子供ながらに、聞き分けの良いヤツだと思う。
いや…、素直に聞く事が楽だっただけの事。
東条の子供として、この世に生を受けた定めとして――
講師が来るのを、イヤイヤ待っていると。
庭先で、メイド長の佐々木と小さな姿を捉えた。
・・・蘭だ。
どうやら親子で、草むしりをしているらしい。
顔に泥をつけて、ニコニコ笑って草を取っている。
その笑顔を見て、俺はソファから立ち上がった。
「お母さん、少し外に行ってきます!」
「拓海、先生がもう見えるわよ!?」
「5分だけ待って!」
母の静止も聞かず、俺は急いで庭へと出て行った。