すべての、始まり。~貴方しかイラナイ~
まぁ、これだけ可愛いと余計に心配にもなるか…。
「あ、佐々木さん悪いんだけど。
あとで社長室に行くって伝えておいてくれる?」
「はい、かしこまりました。
それでは失礼いたします」
ニッコリ笑顔を見せたあと、平身低頭に一礼してすぐに退出した彼女。
ふわりとアノ男の残り香を落として、バタンと静かにドアを閉めて行った。
・・・またヤッてたのか、アイツら――
いや…彼女の名誉の為に、アイツが我慢出来なかった事にするか。
彼女から受け取った書類に眼をやりながら、ハァと溜め息を落とす俺。
入社してすぐ社長に就任した、ヤケに目立つアイツのせいだろう。
出来たばかりの新社屋は“拓海キャッスル”と、密かに名づけられたが。
このビルよりも社長室にある“秘密の部屋”の方が、よほどアイツの城だろ?