さよならの十秒前

呼出し

7月29日。曇り、時々雨。

私の一日は、紗枝からの電話で始まった。

「…もしもし?」

「島井?紗枝だよ」

あまり眠れなくてずきずきしていた頭に、紗枝の声が響いてきた。

「…ん」

「寝てた?」

「いや…どうしたの」

「今から会える?」

紗枝からの呼出しは、珍しい。

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