さよならの十秒前
「…そうなの?」

本屋で会ったとき、微かに感じた違和感。

紗枝はやっぱり、何か知っている。

「中一のとき、同じクラスになって…夏が来る前に、奈緒は入院した」

「…うん」

「そのとき私、学級委員長でさ。あんまり話したことはなかったけど、週に一回お見舞いに行ったんだ」

紗枝は見かけによらず、優しい。

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