さよならの十秒前
「…違う?」

「僕はまだ15歳なんだよ。あと何年生きるかわからない、でもまだまだ人生は長い。なのに一生、奈緒のことをずっと覚えていられるんだろうか」

修介の声は淡々としていて、でもだからこそ、苦しそうにも思えた。

「勉強だって就職だってあるし、そのうち新しい好きな人ができて、家庭をもって、そんな風に生きていったとき、僕は今のこの痛みをきっと忘れてしまうんだ」

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