さよならの十秒前
「西野が、言いました。なんで自分はもっとお見舞いに行かなかったのかって」

「…うん」

「紗枝が言いました。死んでしまったらもう、謝ることすらできないって」

「…うん」

「修介が、言いました。いつか自分は、この痛みを忘れてしまうって。それが怖いって」

私も怖い。

死ぬことも。

忘れることも。

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