さよならの十秒前
声も小さかったけど、恥ずかしがり屋だったのだろうか。

私はアドレス帳を呼び出し、南原紗枝に電話をかけた。

「もしもーし、紗枝だよ」

底抜けに明るくて、脳天気な紗枝の声が聞こえた。

「あ、島井ですけど」

「番号見ればわかるってー。どうしたの?」

紗枝はとにかく情報通だ。

たぶん私よりいくらかは、坂井奈緒について知っているはず。

小泉とは明日、打ち合わせをすることになっている。

その前に少しでも、坂井奈緒について知っていたほうがいい。

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