さよならの十秒前
まさか、一目惚れとか?

いやいや、ないない。

そんなことを思いながら黙っていると、紗枝がうつむいたまま振り向いた。

「…紗枝?」

心なしか、紗枝の顔色が青いような気がした。

「大丈夫?」

「や、大丈夫…ちょっとクーラーがね、強くて」

そう言うと、じゃぁまた、と紗枝は片手を振った。

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