さよならの十秒前
「あ、待って」

立ち去りかけた紗枝が振り向いた。

「南の海って、やっぱり、沖縄かな?」

私は何気なく、そう尋ねた。

すると紗枝は、ぴくりと頬の辺りを動かした。

「…ねぇ」

静かな声で、紗枝が口を開いた。

「前も言ってたよね、島井。北の大地って」

「あ…うん」

「…何なの?それ」

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