さよならの十秒前
門を過ぎ、入口を抜けると、病院特有のこざっぱりしたにおいがした。

修介はつかつかと歩き、5階の501号室に着いたところで立ち止まった。

「ここだよ」

「え?」

「奈緒のいた病室」

501号室。個室だった。

坂井奈緒が、中学時代を過ごした部屋だ。

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