さよならの十秒前


「…奈緒はさ、普通の女の子だったよ」

ぽつりと修介がつぶやいた。

私は彼の視線を追った。

『501号室』の下には、坂井奈緒ではない名前が、既に貼られている。

修介はそれを、そっとなぞった。

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