この世で一番大切なもの
第六章
俺はほとんど寝ないで動いた。

夕方に出勤をして、ちょうど日付が変わるぐらいに店が終わる。

夜中に営業はできない。

歌舞伎町だけ風営法が厳しいのだ。

夜中の営業ができないのは、ホストの世界で大きな損害だった。

しょうがないことだった。

俺は、それからコマ劇あたりで朝までキャッチといって女をナンパする。

携帯番号を交換して、店に呼ぶのだ。

女からくるのを待っていたら客はできない。

売れないホストのほとんどが客を作るためにキャッチをする。

夜中の時間帯は、ちょうどキャバクラ嬢や風俗嬢が仕事が終わりフラフラしている時間だ。

ホストに通う女のほとんどが、夜の仕事をしている。

高額なホストクラブの料金を、昼間の仕事をしている女はまず払えない。

また、ドラマや漫画で見るような女社長が、一晩で何百万も使うなんて夢のような現実はなかった。

夜が明け、朝までナンパしたら、重たい身体を引きずりながら寮に帰る。

昼までのわずかな睡眠時間。

昼間にまだ寝ていないが起きて、夕方の出勤時間までキャッチ。

今度は仕事帰りではなく、出勤途中のキャバ嬢や風俗嬢を狙うのだ。

その他にも一日中、携帯番号を交換した女と連絡を取る。

女によって生活リズムはさまざまだ。

一日中、携帯電話は鳴りっぱなし。

休む暇もない。

電話代も半端じゃなくかかる。

そんな生活を二週間送った。













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