この世で一番大切なもの
適当な話をして、飲み物も飲み終える。

まだ午後二時。

まだまだ店が開くまでに時間がある。

「この後どうする?」

女が聞いてくる。

俺は最初から時間が余るのは分かっていた。

それを計算して、この時間に女と会ったのだ。

「ついてこい」

俺はそう言って飲み物を片付けた。

サングラスをかける。

これで万が一、他の客に見られても分かりづらくさせることができる。

コマ劇を通り過ぎ、歌舞伎町の奥に入って行く。

女は黙ってついてくる。

きっと内心は不安でしょうがないのだろう。

「ここにしよう」

俺は言った。

「えっ」

女は驚いていた。

ラブホテルだったからだ。

普通のネオンとは違う、怪しい光が輝いている。

「入るよ」

「う、うん」

女は動揺していたし、下を向いていたが抵抗はしなかった。

俺にはそんなことは分かっていた。

俺のことを本当にこの女が好きなのは分かっていたし、好きな男に、彼氏に抱かれて嫌な女はいない。

普段ホテルなども行かないのだ。

ホテル代はかかるが、店に行く前にセックスをしてメロメロにさせる。

レイヤから、女と金のことでもめたら、とりあえずセックスをしろと教わっていた。

セックスの快感で金銭感覚が狂うのだ。

また女の多くがエムだ。

セックスで支配されてしまったと思い知らせ、女の金をコントロールするのだ。

ホストがよく、

「枕営業なんてしたことない」

なんて言っているが、そんなのは絶対に嘘だ。

100パーセント、売れっ子ホストは枕営業をしているといってもいい。

性病になるのなんてザラだ。

俺はホストに命をかけている。

枕だろうがなんだってやってやる。

ホストとして生き残る為ならデブでもブスでも抱ける・・。

今までもそうしてきた。

俺はそう自分に言い聞かせ、醜い行為を正当化し、空いていた部屋番号のボタンを押した
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