三日月<本編>
ボーリングはそろそろお開き。


ちあきは幹事の手伝いしてるから、みんなにレジのほうに向かうように言って、残されてた3つのボールを片付ける。



「持てんの?」

拓也が、ちあきからボールをひょいと取って言った。

男が使う重さでも、持てないほどじゃない。

でも拓也は、

「いいからちあきも向こう行き。金集めるん青ちゃんだけやったら大変ちゃうか。」


そう言ってちあきの腰を優しく押した。



腰を抱かれた感じでドキッとしたけど、気づかれんように


「ありがとう」

そう言って青ちゃんが会計してるレジに走った。


青ちゃんは同じクラスの、同じ歳の男で幹事的な役割。


「もーめんどくさい。俺次から幹事なんかやらん!」


とか言っててもやっぱりしてくれるし、青ちゃんだと結構人も集まる。


少なくない人数やし、大変やろと思って今回はちあきも幹事を手伝ってた。




ボーリングが終わって、人数は結構減った。


今日は思いっきり遊ぼうってことで、前からカラオケのオールが予定されてた。



結局、そのオールコースに参加になったのは7人。


拓也、青ちゃん、りょーちゃん、ちあきとあと三人。

紅一点やけどやっぱりいつものことやし。



軽く居酒屋で晩ごはん食べて、カラオケに向かった。



席は拓也の隣。

このメンバーの中でタバコを吸うのは拓也だけやから、はしっこにあった灰皿を拓也の前に持っていく。


「お。気ぃきくやん☆」

「やろ☆」

そう答えたんはテレ隠し。

インターホンに一番近いんはちあきやったから、


「みんなドリンク何にするん?」


そう聞くんは普通やった。


一人づつ聞いていく。

でも拓也には聞かへん。


「おいっ」

そう言ってスネてみてる拓也やけど、ドリンクが運ばれて来た瞬間ちょっとビックリしてた。

知ってたもん。学校でも毎日、毎時間飲んでる。拓也がお酒以外で好きな飲み物はジンジャエール。



目を少しおっきくした笑顔で、


「やるやんー!」


って言ったけど。



知ってたもん。そのくらい。
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