初恋彼女
「実優、実優ができなかったってところできたよ」
「え、どこどこ?」
加藤先輩が差し出す楽譜を指差している
えっと、こんな感じで・・
そういって先輩は軽々とメロディをフルートで奏でていた
「んー・・」
浅原先輩もトランペットを握り吹き始めた
また俺は驚いた
浅原先輩もめちゃくちゃうまかった
何度かメロディを奏でているうちに
最初はグダグダだったトランペットもだんだんと形になってくる
「あ、できた!」
そう彼女は声を上げる
「うん、そうそう!」
加藤先輩の笑顔は
輝くほどまぶしくて
まだ話したこともないけど
やさしい人なんだとわかった
はにかんだ笑顔が優しくて
心臓が大きく波打った
「よし、練習戻るぞー!」
「がんばれっ」
キャプテンの一声で俺たちはグランドへ戻る
心臓は休憩したはずなのにまだ大きく波打っていて
俺はそれをかき消すように思い切りボールを蹴った