初恋彼女
若葉 さとみside
最近蒸し暑さが一層増すこのごろ
何もしていないのに汗がじんわりとにじむ日々だ
私はその汗をやさしくタオルでふきとった。
「さとみー!今日一緒に練習しようよ!」
聞きなれた実優の声がする。
彼女の手には光り輝くトランペット。
名前は『エドワード3世』らしい。
加藤さとみ 15歳
「うん、いいよ。」
吹奏楽部フルートパート。
そう私は楽器を組み立てる。
物心ついたときからフルートはいつも一緒だった。
元有名楽団サックス奏者の祖父母、
プロヴァイオリニストで世界を飛び回ってほとんど家にいない父、
今は楽器会社に働いている元ホルン奏者の母
トランペットを吹いていた兄
今はもういないけど 私とともにピッコロを吹いていた妹
いとこもクラリネット奏者だし、親戚にはプロヴァイオリニストもいる。
親族をはじめ祖父母の代から私の家は超音楽一家で
お父さんの兄弟もお母さんの兄弟も
音楽をやっていて、なにかとその関係の人と結婚している。
その中に私は生まれて
フルートを手渡された