laughmaker
「相沢!マイク!忘れてんじゃねーよ!」
「あ!すみません!」
私はこの春大学を卒業して念願だったお笑い事務所に就職した。
もちろん、お笑い芸人ではなく、
うちの事務所が運営している劇場の事務スタッフで。
入社してまだ1か月。
基本雑務ばかりだけれど、
近くで笑いを感じれるこの職場はやっぱり楽しい。
「マイクマイクっと。」
上司に怒られてスタンドマイクを舞台に立てに行く。
開演まであと30分。
まわりのスタッフもせわしなく動いていて、
舞台上はチェックのため照明が明るく輝いている。
照明の中をいそいそと移動し、
マイクと音声コードをつなげる。
「…準備できた?」
低い声が後ろから聞こえて振り返ると、
全身真っ黒いスーツを着た、男。