蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
「空、大丈夫か?」

「はい……なんとか。でも、ここはどこでしょう?」

「さあな。城から脱出する事が優先だったし……落ちる場所まで、想定しなかったのはまずかったか」


氷悠に抱きついたまま空が答える。


辺りを見回すが人の気配はなく、静まり返っていてとてもじゃないが期待はできない。


氷悠の考えでは、空守は自然から寵愛されし唯一の存在であり、己の意思に関係なく危険から守護される、といわれている。


氷悠もよくは知らないが、可愛がってくれた故郷の賢者がそんな事を言っていたのを思い出す。


風が氷悠と空を安全な場所まで運んだ、と考えてもいいかもしれない。それが一番しっくりするのも、確かだった。


氷悠はため息をつく。


「いい加減どいてくれ」

「氷悠……水の音がしませんか?」

「水?こんな場所で?」



こんな鬱蒼とした森で何故水の音がするのか、と氷悠は思った。



< 30 / 61 >

この作品をシェア

pagetop